年齢を重ねても記憶や認知能力を保ち続けるためには、栄養のある食品・栄養素・特定のホルモンなどが必要です。今回は、記憶や認知能力を維持するために意識したい、食生活の3つのポイントをご紹介します。
1. 神経が発達するのに必要な構成物質「オメガ3」と「オメガ6」
神経の発達に絶対に必要な物質は、不飽和脂肪酸のオメガ3とオメガ6です。これらは、体内で作ることができない「必須脂肪酸」なので、どうしても、体の外から摂取する必要があります。つまり、食事から摂らなければいけないのです。
そして、オメガ3は体内でドコサヘキサエン酸(DHA)に、オメガ6はアラキドン酸に変換されて、脳を構成する物質として活動します。
脳内のオメガ3の割合がふえると、脳の血流や神経伝達が良くなります。よって、オメガ3が変換された形のDHAを含む食品を食べるのが良い、ということになります。
一方、オメガ6は、必須脂肪酸ではあるものの、体内でアラキドン酸に変換されると、ときに炎症を起こす物質になってしまいます。
オメガ3とオメガ6の上手な摂り方
このふたつの必須脂肪酸の比率は、ほぼ1:1が理想的なのですが、実際にはオメガ6が常に過剰な状態になっています。現実的には、この比率が1:30とか、1:50とかになってしまっているケースが多いとか。これは、オメガ3系列の植物油が亜麻仁油・インカインチオイル・えごま油など、どちらかというとあまり一般的ではない油に属するからでしょう。
一方、オメガ6系列の植物油とは、コーン油・サラダ油・ごま油・大豆油・ヒマワリ油などを指し、オメガ3系よりは世間一般に知れ渡っており、出回っている量も多いから、いきおい人々の摂取量も多くなっていると思われます。
オメガ3とオメガ6の摂取量の不均衡を是正するためには、オメガ6脂肪酸を多く含む食品を意識的に避ける必要があります。他方、オメガ3脂肪酸が変換されたDHAを含む食品は積極的に摂取するのがベストです。
DHAの供給源として最高なのが魚油です。魚油に多く含まれるDHAは、海馬での神経形成に良い影響を及ぼし、記憶力を高める効果もあります。
DHA含有量の多い魚は、イワシ・サバ・ブリ・サンマなどの青魚、マグロのトロや脂の乗ったウナギなどです。
ただ、DHAは調理をすると減少してしまう性質があり、特に焼いた場合、50%ほど減ってしまうとのこと。つまり、魚はなるべく生で食べるのが良い、ということになります。
DHAの一日の望ましい摂取量は1グラム。魚を食べない人やベジタリアンのかたは、魚油のサプリメントあるいは海藻をベースにしたオメガ3脂肪酸のサプリメントがお勧めです。
2. 脳にたっぷりのエネルギーを
スプーン一杯の有機ココナッツオイルを1日に2-3回摂取する
ココナッツオイルは、中鎖脂肪酸という天然油脂を約60%も含んでおり、即座にエネルギーに変化します。
中鎖脂肪酸はココナッツなどヤシ科植物の種子から採れる天然成分で、母乳などにも含まれており、消化吸収がよく体内でスピーディーにエネルギーになります。
中鎖脂肪酸100%の油のことをMCT(Medium Chain Triglyceride)オイルと言います。MCTオイルは、一般的な油の約4倍のスピードでエネルギーになるという特徴があります。
少なくとも12時間、夜の間は絶食する
絶食がいいとされているのは、絶食は「ケトーシス」を促進するからです。
ケトーシスとは、肝臓が脂肪を燃焼し、ケトン体と呼ばれる化学物質を産生するプロセスのことです。この状態は、身体の一番のエネルギー源である炭水化物が足りなくなると起こります。
認知機能には、軽いケトーシス状態が最適だということが明らかになっています。絶食によってそのケトーシスが促進され、認知機能が高められます。
3. 脳を保護する成分を意識する
脳を保護するためにホモシステイン値を改善する
血中のホモシステイン値が高いことは、認知症の明らかな要因になっています。
ホモシステインは血中に存在するアミノ酸の一種で、必須アミノ酸であるメチオニンの代謝の途中で産生される中間代謝物です。
血中ホモシステインは、神経毒作用を示すため、神経細胞を損傷し、認知機能に影響を及ぼすと言われています。よって、慢性的に血中ホモシステイン値の高い人は、認知機能の低下と海馬の縮小のリスクに曝されることになります。
神経病理学の分析では、血中ホモシステイン値の継続的上昇とともに、アルツハイマー型認知症や血管性認知症のリスクが上がり、そのリスクは平均値の人に比べて高くなることが明らかになっています。
ホモシステイン値が高いということは、ビタミンB6、B9(葉酸)、B12が不足していることを意味します。ホモシステイン値を低く最適に保つには、ビタミンB6、B9(葉酸)、B12がすべて活性型で、十分な水準で供給されている必要があります。
軽度認知障害(MCI)を抱えた人を対象に、血中ホモシステイン値を低下させる働きをするビタミンB群を投与しての臨床試験で、ビタミンB群によるMCI病態の進行抑制効果を実証した例もあります(※)。
ホモシステインとビタミンB濃度と認知機能の関連性は明らかなので、MCIと診断されたかたには、医師に血中ホモシステイン値をコントロールしてもらうことを推奨したいところです。
※参考:http://www.mplanguage.co.jp/book/recommendbook_e/
微量元素(亜鉛・セレン・リチウム)を至適用量摂取する
人体を構成する元素のなかで、酸素・炭素・水素・窒素の4つを除いた他の元素をミネラルと呼び、さらに、その中でも極めて少量しか存在しないものを微量元素と呼びます。
微量元素は、その欠乏や過剰が私たちの健康や病気と深いつながりがあることが明らかになっています。
微量元素の種類としては、鉄・亜鉛・銅・クロム・モリブデン・マンガン・セレン・ヨウ素などがあります。
ある微量元素が欠乏すると、MCIを含む認知症の進行が助長される一方で、別のある微量元素が過剰になることによって、同様の症状が見られることもあります。微量元素の所要量と摂取限度については、専門医に確認してもらうことを推奨します。
≫認知症と関係の深いミネラル「亜鉛・セレン・リチウム」の詳細はこちら
ビタミンD不足が、認知症リスクを高める
骨の健康から免疫強化まで、種々の効果が期待されているビタミンDですが、様々な研究によって、ビタミンDの不足と認知機能低下の関連性が取り沙汰されています。
米国神経学会や米ラトガース大学大学院の研究者らによる研究の結果、ビタミンD不足が認知機能低下のリスクを高めるという結果が発表されています。
認知機能低下の予防・治療を目的としたビタミンDの至適用量については、医師に相談してアドバイスを受けることを推奨します。
毒性のある成分を除外して解毒(デトックス)
毒物が蓄積すると、脳がダメージを受け、認知機能が低下していきます。
重金属のうち、鉛・カドミウム・水銀は毒性があり、体内に蓄積すると脳にダメージを与えます。人体にとって有害です。
例えば水銀は、自然界に普遍的に存在する重金属ですが、特にメチル水銀などの有機水銀は、中枢神経に障害を起こすことが知られています。大型の魚、つまりクロマグロ・メバチマグロ・メカジキ・キンメダイや、クジラなどの一部の魚介類の場合、メチル水銀濃度が比較的高いものが見受けられます。
魚介類は、良質なタンパク質や、健康に良いと言われるDHAやEPAなどの高度不飽和脂肪酸を多く含むのみならず、カルシウムなどの微量栄養素の摂取源でもあり、積極的に食べたい食材ではありますが、魚の種類には気を付けて摂取することをお勧めします。
また、歯科用アマルガムは歯科医で取り除いてもらいましょう。アマルガムには、高濃度の水銀が含まれているからです。
水銀は、人体に有害な物質で、中でも神経毒性の強い物質です。不眠・神経的なイライラ・振戦・感覚異常・頭痛・めまいなどの全身に表れるさまざまな不快な症状は、口中のアマルガムが原因となっている可能性があります。
水銀は神経毒性の強い物質であり、特に脳内に取り込まれた水銀は長期間蓄積するため、海馬の神経形成に悪影響を与えて、アルツハイマー型認知症発症の端緒となると論じる研究者もいます。
解毒作用(デトックス)を持つ、食物繊維たっぷりの食べ物
デトックス食材には3つのタイプがあります。
①体内の有害物質を包みこんで、体内に吸収させなくする食材
下記のような硫黄化合物を含む食べ物は、体内の有害物質を包みこみ、腸壁を通過させなくする効果があります。これにより、鉛・水銀・ヒ素・アルミニウムといった有害物質が体内に吸収されるのを防いでくれます。
②有害物質を無毒化するのを助ける食材
下記の食材は、アルミニウム・鉛・水銀ヒ素といった有害物質を無毒化するのを助けてくれる効果があります。
③有害物質の体外への排出を促す食材
多くの果物の成分であるペクチンは、ゼラチンのような働きをし、毒素と結合して、毒を体外に排出することを促してくれます。腸内環境を整える食物繊維のペクチンを多く含む食材を意識的に摂取して、体内の有害物質を解毒・排出し、身体が本来もつ免疫力を取り戻しましょう。
下記の食べ物は、カドミウム・鉛・水銀・ヒ素の排出を促進します。