65歳未満の若い世代で発症した認知症を「若年性認知症」と呼びます。若年性認知症は、「若年期認知症(18―39歳)」と「初老期認知症(40-64歳)」の総称でもあります。
発症年齢で区分した概念であるため、認知症を引き起こしている原因はいろいろで、病理学的にもさまざまな疾患を含んでいます。このような特性から、高齢者における認知症とは異なる独自の問題点が生じてきます。
若年性認知症と高齢者の認知症との違いを知ることは重要です。それによって、若年性認知症に対する理解や対応の仕方が違ってくるからです。
今回は、若年性認知症と老年性認知症の違いや、認知症を発症した際に活用したい制度や支援についてご説明します。
若年性認知症で発症率の高い認知症のタイプ
若年性認知症では、脳血管性認知症が最も多く(約40%)、続いてアルツハイマー型認知症(約25%)が多いとされています。以下、事故などで頭部外傷を負ったことによる頭部外傷後遺症、前頭側頭葉変性症(ピック病)、アルコールの乱用によるアルコール性認知症、レビー小体型認知症の順となっています。
また、若い年代で発症することから、遺伝的な要因(突然変異、ApoE4など)が強い傾向にあると考えられます。加えて、家族性アルツハイマー病と呼ばれる疾患もあります。
若年性認知症の問題点
若年性認知症は現役世代で発症し、しかも女性より男性が発症するケースが多いため、経済的打撃が大きくなります。仕事・住宅ローン・子供の教育などを含む未来設計を変更せざるを得なくなることもあります。
また、本人や家族の精神的なショックが甚大で、介護する配偶者の精神的・肉体的負担も大きくなります。未婚の場合は老いた親に介護の負担がかかってしまいます。
本人や配偶者の親の介護が重なることもあり、介護の負担が大きくなるという問題点もあります。
若年性認知症かも?と思ったら
若年性認知症では、初発症状が、うつ・精神的ストレス・更年期障害などに類似しているため、初期診断が見誤られることがあります。
異常を感じたら、若年性認知症の診断が可能な医療機関かどうかを確認したうえで、早めに受診するように心がけてください。たとえば、日本認知症学会あるいは日本認知症予防学会認定医のいる医療機関であれば、安心かもしれません。
認知症では、若年性・老年性を問わず、異常を感じたら早期に受診することが大切です。
若年性認知症と老年性認知症は、どこが異なるのか?
65歳未満で発症する若年性認知症では、脳血管性認知症が最も多く、女性よりも男性の方が発症しやすいとされています。一方、65歳以上で発症する老年性認知症では、アルツハイマー型認知症が主なタイプで、女性に多いといわれています。
それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
若年性認知症 | 老年性認知症 | |
---|---|---|
発症年齢 | 65歳未満 | 65歳以上 |
性別 | 男性に多い | 女性に多い |
発症率の高い認知症のタイプ | 脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症、頭部外傷後遺症、前頭側頭葉変性症(ピック病)、アルコール性認知症、レビー小体型認知症の順で多いとされている | アルツハイマー型認知症が多く、約60%を占めている |
進行速度 | 進行が速い症例も多い | 遅発性のアルツハイマー型認知症が多い |
症状 | 言語障害・知覚及び運動機能障害・実行機能障害など、記憶障害以外の認知領域の障害が認められる | |
完治は可能か? | 不可能 ※完全に進行を止めることはできませんが、抗認知症薬によって進行を遅らせたり、適切なリハビリテーションで脳を活性化し、認知機能の低下を遅くすることは可能です。 |
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問題点 | 経済的打撃や、介護者の精神的・肉体的負担が大きい。また、本人や配偶者の親の介護が重なることもあり介護の負担が大きくなる | 老々介護、子世代による遠距離介護 |
認知症患者を支援する制度や活動
日本では、認知症を発症した本人やその介護者が利用できる制度や支援があります。若年性認知症と診断された場合は、若年性認知症コールセンターなどで、支援団体や介護サービスの情報を集めて、自分に合ったものを選ぶといいでしょう。
下記のような制度・支援を活用することも検討してみてください。
若年性認知症で活用したい制度・支援
- 傷病手当(職場に止まりながら医療の継続を可能にするものとして)
- 自立支援医療制度
- 精神障害者保健福祉手帳
日本認知症本人ワーキンググループへの参加
認知症に関する情報を収集する場として、認知症本人の集まりに参加するのもいいでしょう。そのひとつに「日本認知症本人ワーキンググループ」があります。
このワーキンググループでは、認知症と共に生きている体験や工夫を生かして、暮らしやすいわが町をみんなで創っていくことを目指し、国や社会に政策を提言するなどの活動もできるようになっています。
参加されている方は、認知症になった後も社会の一員として、充実した生活を送るという希望を掲げて、新たな「認知症後の人生」を拓こうとしています。