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認知症リスクを高める病気

認知症リスクを高める病気

認知症の予防

糖尿病や高血圧の人は、健康な人と比べて認知症リスクが数倍高くなるといわれています。

今回は、認知症のリスクを高める5つの病気「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」「フレイル」「サルコペニア」と、認知症との関係についてご紹介します。

認知症リスクを高める病気
1. 糖尿病

糖尿病
糖尿病とは、すい臓から出ている「インスリン」というホルモンの働きが不十分なため、ブドウ糖をうまく血液中から体内に取り込めなくなり、慢性的に血液中のブドウ糖(血糖)が多くなる、つまり血糖値が高くなっている状態を言います。

糖尿病は「暴飲暴食」「肥満」「運動不足」「ストレス」などのライフスタイルの乱れがおもな原因となって起こります。糖尿病が生活習慣病と呼ばれる所以です。

糖尿病には合併症が多いのですが、最近では、認知症も糖尿病の合併症のひとつとして、注目されるようになっています。糖尿病の人は、そうではない人に比べて、アルツハイマー型認知症認知症の発症リスクが2-3倍にもなることが明らかになっています。

糖尿病と認知症の関係

なぜ、糖尿病があると、認知症になりやすいのでしょうか。これには、いくつか考えられる可能性があります。

①インスリンの影響

まず、インスリンというホルモンの影響が挙げられます。

インスリンの作用によって、糖は、脳や筋肉、肝臓でエネルギーとして使われます。ところが、糖尿病になると、高血糖が続き、徐々にインスリンの働きが悪くなってきます。

この状態を「インスリン抵抗性」と言いますが、インスリンが十分に作用しないと、脳は糖をエネルギーとして取り込みにくく、エネルギー不足の状態になります。インスリンは、脳に働きかける記憶物質としての役割も果たすので、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」があると、認知症のリスクが高まるのです。

また、血糖値が高い「インスリン抵抗性」の状態では、アルツハイマー型認知症の原因物質である「アミロイドベータ」も脳内で増加しやすく、アルツハイマー型認知症を誘発すると言われています。

②糖毒性

いったん高血糖が起こると、さらなる高血糖を呼ぶという悪循環は「糖毒性」と言われていますが、ますます糖尿病が悪化していきます。そして、さまざまな合併症が表れるようになります。

糖尿病の合併症を防ぐためにも、血糖値を低下させ、糖毒性を取り除く必要があります。認知症も糖尿病の合併症のひとつだからです。

糖毒性が脳の神経細胞に影響し、老化を早めている可能性も指摘されています。

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2. 高血圧

高血圧
身体の中を絶えず流れる血液は、心臓の収縮で全身に向かって放たれるため、一定のスピードを持っており、それが、血管への圧力となります。

この「血管への圧力」つまり「血圧」が高い状態が「高血圧」です。

高血圧と認知症の関係

血圧が高いということは、常に血管に高い圧力が加わっている状態であるため、血管の壁が硬くなる「動脈硬化」を促します。結果、脳出血や脳梗塞などの脳血管障害を引き起こし、脳血管性認知症の原因となります。

高血圧の人は、正常血圧の人と比べて4.5-10倍も脳血管性認知症の発症頻度が高いと言われています。

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3. 脂質異常症

脂質異常症
以前は「高脂血症」とも呼ばれていた病気です。血液中に含まれるコレステロールや中性脂肪などの脂質が過剰で、血液がドロドロの状態を指します。

脂質異常症というのは、これらの脂質の中でも、特に、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多すぎる、あるいは、善玉(HDL)コレステロールが少なすぎる、などの状態を示す病気です。

脂質異常症と認知症の関係

血液中に余分な脂質が多くなると、動脈硬化を起こしやすくなり、脳卒中や脳梗塞、脳出血などのリスクが高くなります。そして、ひいては、脳血管性認知症に繋がる恐れがあります。

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4. フレイル

フレイル
「フレイル」は、英語の“frail”つまり「虚弱」を意味します。人は、加齢と共に、心身の活力が低下して、弱ってきます。つまり、「虚弱」になってくるわけです。

ただ、フレイルは、生活機能障害が出てきて、要介護状態になる危険性が高まっているものの、しかし、かろうじて、なんとか、自立生活は送れている状態を指します。

フレイルかどうかについては、次の5つの評価基準があります。

  • 力が弱くなった
  • 活動量の低下(不活発)
  • 歩行速度が遅くなった
  • 疲労感
  • 体重減少

このうちのいずれにも当てはまらない場合は、健常、1つか2つ該当する場合は、フレイル予備軍(プレフレイル)、3つ以上当てはまる場合は、フレイルと分類されます。

フレイルに陥ると、閉じこもりや孤食、低栄養・転倒・骨折の増加、口腔機能の低下が起こります。ひいては、認知機能の低下を引き起こし、認知症発症のリスクを上昇させる可能性があると考えられています。

フレイルの改善には、栄養状態の改善や積極的な運動、引きこもりを避けての社会活動への参加が大切とされています。

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5. サルコペニア

サルコペニア
サルコぺニアとは、「sarx(筋肉)」と「penia(喪失)」というギリシャ語を組み合わせたもので、日本語では「加齢性筋肉減弱症」と
訳されています。加齢に伴う、筋肉の量の減少および筋力・身体機能の低下を指します。

サルコペニアは、フレイルの原因のひとつです。フレイルは、身体的な問題、精神・心理的な問題・社会的な問題が関わっています。

しかし、サルコペニアは、身体的な問題が中心となっています。サルコペニアは、フレイルの身体的な表現型の一部とも言えます。

サルコペニアが進行すると、転倒のリスクが高くなり、生活動作も著しく低下して、フレイルに移行し、要介護状態に進む可能性が高くなります。つまり、認知症発症の可能性も高くなる、ということです。

良質な栄養と適切な運動がサルコペニアの治療法と目されています。フレイルとサルコペニアと認知症の関係は以下のように図示できます。

フレイルとサルコペニアと認知症の関係

フレイルとサルコペニアと認知症の関係

生活習慣の見直しが大切

糖尿病・高血圧・脂質異常症は、いずれも生活習慣病の代表格。それぞれ単独でも認知症のリスクが上がりますが、合併すると、さらに動脈硬化を促進し、認知症を発症しやすくなることもわかってきています。

上記で挙げた病気は、暴飲暴食や運動不足、喫煙習慣などが主な原因とされています。いつまでも健康な体を維持するために、生活習慣を見直すことが大切です。