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喫煙・過度の飲酒・肥満より健康を左右するものとは?

喫煙・過度の飲酒・肥満より健康を左右するものとは?

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以前、メルマガで、英国における「孤独担当大臣」という新ポジションの設置について取り上げたことがあります。

その後、認知症を始めとする各種成人病・生活習慣病に係る様々な報道や記事に接しているうちに、
人間同士の「つながり」が健康に大きな影響を及ぼしている、
ということを、私、認識せざるを得ないようになりました。

例えば、ハーバード大学のRobert Waldinger教授の
「人生を幸せにするのは何? 最も長期に亘る幸福の研究から」(Cited from TED Talk)というトークは印象的です。

同教授は、一生を通じて、人を健康で幸福にしてくれるのは、
富でも名声でもない、「良い人間関係」であると、結論づけています。

こういう説は、あなたも、これまで時々、耳にしたことがあるかと思います。

しかし、現実の生活に立ち返ると、
やはり、「蓄財をすること」「名を挙げること」が良い人生への最短距離と思い直して、
もっと成果を出すように頑張ろうという方向に突っ走ってきたかたがほとんどではないでしょうか。

ただ、Waldinger教授の、この結論は、1938年から80年近く続いている
ハーバード成人発達研究(Harvard Study of Adult Development)の成果に基づいており、
しっかりとしたエビデンスに裏付けられていることが注目に値します。

人間誰しも、家族・友人・職場の同僚・地域の隣人・趣味の知り合いなど
周囲の人間関係において、良好な温かい「良いつながり」を保ち、
その中で生きていきたい、幸せに暮らしていきたい、と願っています。

にもかかわらず、そのような温かい良好な関係は、築くのが難しく、
往々にして、失敗の憂き目を見るのは何故なのでしょう。

人間は、各人が一筋縄ではいかない個性を持ち、それらが他者と複雑に絡み合って、
さまざまな生活の場面が織り成されていきますから、
家族や友人を始めとする周りの人間関係を良好に維持していくのは、実は、容易なことではないわけです。

しかも、その努力は、地道なものであり、生涯、コツコツと続けていかなければならない種類の努力に属します。

手っ取り早く、容易に、生活を快適にしてくれるものが大好きな人間の本性に合わない心理的操作です。

そのため、ついつい、わかりやすい「お金稼ぎ」に走り、
他者との「良いつながり」への努力の方を軽視したり、
あるいは無視したりして人生を過ごしてしまう。

ところで、Waldinger教授は、温かい人間関係は、脳を活性化させるとも述べています。
「あの女性(男性)が自分のことを好いてくれている」と思うと、
脳が活性化し、仕事にも一段と身が入って...、という経験は
誰しも覚えがあるのではないでしょうか。

堅固な良い関係をしっかりと70代あるいは80代まで保ち続ける人は、
その「つながり」に守られ、何かあったときに本当に支え合う人がいると感じつつ、
記憶障害から遠ざかることができるとか。

「つながり不足」は重大な健康リスクであり、人を幸福にしない、とするWaldinger教授のコンセプトを、
改めて、前向きに検討してみる、ということを、今回、推奨させて頂きたいと思います。
 
 
そして、結びとして、「トム・ソーヤーの冒険」の著者である
米国の小説家マーク・トウェイン(1835年-1910年)の晩年の言葉を贈ります。

「かくも短い人生に、争い、謝罪し、妬んでムシャクシャしたり、
責任を追及している時間などない。 愛し合うための時間しかないのだ。」

“There isn’t time, so brief is life, for bickerings, apologies,
heartburnings, calling to account. There is only time for loving.”