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CTADの直近のトピックス

CTADの直近のトピックス

最新TOPICS

数あるアルツハイマー病関連学会のひとつであるCTAD (Clinical Trials on Alzheimer’s Disease)の最近の
トピックスにつき、岩田淳先生(日本認知症予防学会評議員)からの情報に基づいて、
皆様とシェアしたく存じます。

本年度2018年は、10月24日から27日までスペインのバルセロナで開催された由。

主なトピックス

1.アルツハイマー病の研究成果

アルツハイマー病は、脳にアミロイドβというタンパク質がたまることを引き金に、タウタンパク質が糸くずのように集まり、脳の神経細胞が変性したり、脱落したりして、脳が委縮することがすでにわかっていました。
通常、多く見られるアミロイドβはアミノ酸が40個つながったものです。ところが、ある研究者らは、患者の脳にアミノ酸が42個つながったアミロイドβ(アミロイドβ42)がたまっているのを発見しました。
アミロイドβ42は、脳の中で固まりやすく、タウタンパク質の蓄積を促すなど、発症に重要な役割を果たしていました。
正常ではできないアミロイドβ42が脳にたまって、アルツハイマー病を発症することが示されたのです。

つまり、以前から血液中のアミロイドβ42の測定値が診断的である、という報告はあったわけです。
しかし、同時に有用ではない、という報告も多く、結論は先送りにされていました。

そうした背景があったにもかかわらず、2017年そして2018年と相次いで、
米国・オーストラリア・日本の各研究チームから、血液中のアミロイドβ42の測定値が有用であるという
発表がそれぞれ独立して出されたために、当会議では、この内容につき、大きな盛り上がりが見られたとのこと。

奏功の要因は、第一に、過去の測定系とは比べ物にならないくらい精密かつ高感度の測定系を使用して結論が導きだされたこと、第二に、脳内にアミロイドβが蓄積している、あるいはしていないことをアミロイドPETなどの方法で確認した対象者で測定したこと、の2点に求められる由。

今回、注目されている血液バイオマーカーは、たとえ無症状であっても脳内のアミロイドβの蓄積を反映することが示されました。

そのことも相俟って、今後は世界的スケールで、測定系や測定値の標準化が行われ、健康診断の一次スクリーニングなどで使用可能なバイオマーカーとなることが期待されています。

2.Trial-Ready Cohort始動!

アルツハイマー病の治験コホートとして、
欧州には、European Prevention of Alzheimer’s Dementia Trial-Ready Cohort(EPAD-TRC)、
米国には、Trial-Ready Cohort for Preclinical/Prodromal Alzheimer’s Disease(TRC-PAD)が、それぞれ在ります。
これらは、予め脳内にアミロイドβの蓄積がある集団を確保しておき、必要に応じて、
治験にリクルートするという方法論のもと、設けられたコホートです。

理由は、アルツハイマー病の治験対象が、プレクリニカル(前臨床期)アルツハイマー病に急激にシフトしていることに端を発しています。
これは、たとえ、軽度認知障害レベルでも有症状となったアルツハイマー病の病理学的異常は強く、抗アミロイド薬などの効果が得にくいと考えられているためです。
しかし、一方で、前臨床期のアルツハイマー病の場合、無症状であるため、対象者を短期間に治験にリクルートすることは困難を極めます。そのために、上記のTrial-Ready Cohortが設けられたわけです。

ちなみに、EPAD-TRC参加者による治験は、2019年から開始される予定とのことです。

[出典:岩田淳先生(日本認知症予防学会評議員)「第11回CTAD」国際会議参加報告より引用]