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病院での認知症検査(物忘れ外来・認知症外来)

病院での認知症検査(物忘れ外来・認知症外来)

認知症の治療

認知症は「不治の病」と、これまで、長年にわたって思われてきました。

しかし、最近になって、早期に発見し、早期に治療を開始することによって、進行を遅らせたり、ほぼ完治の状態にまで回復させたりすることができるとする研究結果が発表されるようになっています。

そのため、早期発見と早期治療の重要性が叫ばれているわけですが、初期段階の場合、診断が難しいのが常です。よって、専門の医療機関での検査が必要となってきます。

「物忘れ外来」あるいは「認知症外来」の受診を

「物忘れ外来」あるいは「認知症外来」の受診を
地域の精神神経科病院や総合病院、あるいは診療所でも物忘れ外来を開設しているところが多くなってきました。

医療機関によっては「メモリー外来」「老年期外来」などの名称を使っているクリニックもありますが、診療内容に変わりはありません。今では、「物忘れ外来」が認知症を診る専門の外来と一般にも認知されるようになってきました。

なお、さまざまな診療科が認知症を診るようになってからは、複数の診療科が連携しながら、認知症の診断、治療を進めていくケースも増えています。

認知症の診断および検査の一般的な流れ

「物忘れ外来」あるいは「認知症外来」の受診を
認知症の診断には、認知機能症状の把握が不可欠です。特に、アルツハイマー型認知症は、記憶力低下が最も重要な症状であり、初発症状です。

物忘れ外来や認知症外来で行われる診断および検査を詳しくご説明していきます。

1. 問診

問診
問診は、記憶力・言語理解力・感情・意欲を探ることを目的としています。本人から現在の状況を聞きますが、家族や周囲の人が付き添って、一緒に質問されることもあります。

問診に用いられる評価シートとして普及しているのは、DASC-21(Dementia Assessment Sheet in Community-based IntegratedCare System-21 items)「地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート」です。これは、認知症を持つ人によく見られる「認知機能障害」と「生活機能障害」につき、21個の質問をリストアップしたものです。

2. 神経心理学的検査

神経心理学的検査
神経心理学的検査では、簡単なテストを通じて見当識・記憶・注意・言語などの記憶障害を確認します。

検査内容は病院によって異なりますが、認知機能の評価スケールとして代表的なものが「ミニメンタルステート検査」と「改訂 長谷川式簡易知能評価スケール」です。

その他にも「物忘れスクリーニング検査」や、タッチパネル式コンピューターを用いた「物忘れ相談プログラム」などによって、記憶障害を確認していきます。

ミニメンタルステート検査

ミニメンタルステート検査(MMSE:Mini-Mental State Examination)は、認知機能検査として、世界中で最も普及している検査です。見当識・記憶・注意・言語・描写の項目から構成されています。

改訂 長谷川式簡易知能評価スケール

改訂 長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R:Hasegawa Dementia rating Scale-Revised)は、日本で考案された認知機能障害の評価尺度です。見当識・記憶・注意・言語の項目で構成されています。

3. 血液検査

血液検査
現在の症状の原因が認知症なのか、それとも他の病気なのかを調べるために血液検査を行います。

糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の有無や、認知機能に関わるホルモンやビタミンなどを調べます。

4. 髄液検査 [CSF(CerebroSpinal Fluid) 検査]

髄液検査
血液検査に位置する検査で、アルツハイマー型認知症の原因物質と目されている「アミロイドベータ」というタンパク質が、脳内に蓄積されているかどうかを調べます。

5. MCI(軽度認知機能障害)スクリーニング検査

MCIスクリーニング検査
MCI(軽度認知機能障害)は、年齢相応の物忘れよりも劣化した記憶症状が継続的に続く状態です。認知症には至っていないものの、認知症の一歩手前の「認知症予備軍」と呼ばれています。

MCIを発症した後、そのままの生活を続けることによって、5年ほどで約50%の人が認知症に移行すると言われています。症状の進行を食い止めるためには、早期に治療を受けることが重要です。

MCIスクリーニング検査は、そんなMCIのリスクを判定する検査です。わずか7mlの採血で、「健常」「リスク低め」「リスク中程度」「リスク高め」の4段階で判定することができます。

MCIスクリーニング検査では、アルツハイマー型認知症の原因物質と目されるタンパク質「アミロイドベータ」に関連する、血液中の3つのタンパク質(アポリポタンパク質・補体タンパク質・トランスサイレチン)を測定します。

検査は全国の医療機関で受けることができ、費用は2万円前後となっています。検査結果に応じて、専門医の診断を勧められます。

6. APOE遺伝子検査

APOE遺伝子検査
「アミロイドベータ」というタンパク質は、脳に蓄積すると、アルツハイマー型認知症を引き起こす原因になると目されています。そんなアミロイドベータの脳への蓄積に関わる物質のひとつが「APOE(アポリポタンパク質E)」です。

APOEを司る遺伝子には、主にイプシロン2・イプシロン3・イプシロン4の3種類がありますが、特にイプシロン4は、アルツハイマー型認知症の発症リスクに影響を与えていると言われています。

APOE遺伝子検査では、どのタイプのAPOE遺伝子を有しているかを判定します。5mlの採血で判定でき、費用は2万円前後です。

7. 画像検査(ニューロイメージング)

APOE遺伝子検査
画像検査にはMRIやCT、PETなどの種類があります。いずれの場合も、画像を見ながら脳の状態を診断します。

MRI(磁気共鳴断層撮影装置)

強力な磁石と電波を利用して、さまざまな角度から脳の内部を撮影します。CT検査より時間はかかりますが、脳や海馬の萎縮の状態がわかります。

CT(コンピュータ断層撮影装置)

X線を利用して、脳の内部を断面画像にします。短時間の撮影で、検査することができるので、身体的な負担は少ないと言えます。脳や海馬の萎縮がわかりますが、また、血管性認知症のリスク因子である脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などもわかります。

PET(陽電子放射断層撮影)・SPECT(脳血流シンチグラフィー)

脳に薬品を投与して、その薬品が脳に分布する様子を撮影し、画像にします。MRIやCTではわからなかった血流量が把握でき、認知症の初期症状である脳の血流量の低下などがわかります。また、PETによるアミロイドイメージング検査も可能です。

IP-MS(ImmunoPrecipitation-Mass Spectrometry)法

IP-MS法は、国立長寿医療研究センターと島津製作所が共同研究により開発した、最新のアルツハイマー型認知症の血液検査です。現在、数年以内の臨床実用化に向けて治験が進んでいます。

アミロイドベータの蓄積を調べる従来の検査としては、髄液(CSF)検査などがありますが、侵襲性や検査費用の高さが課題となっていました。

一方IP-MS法では、わずか0.5 mlの血液を採取するだけで、質量分析器で脳内のアミロイドベータが異常に蓄積していないかどうか、早期に検出できます。安価でカラダへの負担も少ないため、検査を受けやすく、アルツハイマー型認知症の早期発見が可能になると期待されています。

脳内アミロイド蓄積を反映する高精度血液バイオマーカーの開発により、必要となる科学的エビデンスを確立するべく、複数の研究所が共同で、全国多施設共同治験に踏み出しています。

8. 判定

APOE遺伝子検査
認知症の診断は、上記の1~7のような複数の検査を実施したうえで、総合的に判断します。認知症のタイプや進行度を見ながら、治療方法を検討していきます。